この記事は、新歓ブログリレー5日目のものとして書かれました。
はじめに
初めまして、galax(@F55331821)と申します。
この京美同新歓ブログリレーでは、他のサークルメンバーが思い思いの推しエロゲを紹介してくれていることと思います。もし他の担当者様の記事を読まれていない方がいましたら、そちらも是非ご覧ください。どんな作品があるのかは他の記事に任せて、この記事では少し別の視点からエロゲを考えていきたいと思います。
そもそもエロゲとは、「R-18シーンを含むゲーム群の総称」であり、そのゲームシステムには多種多様なものがあります。例えば「ランス」シリーズはファンタジー世界を冒険するRPGですし、「戦極姫」シリーズは戦国時代を勝ち抜くストラテジーゲームです。
ですが、みなさんが「エロゲ」と言われるとまず想像するのが次のような画面ではないでしょうか。
上の画像のように、画面下部にテキストボックスがあってセリフが表示され、画面中央でキャラの立ち絵が表示され、というUIを採用しているエロゲやギャルゲが多いです。このような(通称「紙芝居ゲー」などとも揶揄されることもある)ゲームスタイルのものを総称して「ビジュアルノベル」と呼びます。
今回は、数あるエロゲの中でもこの「ビジュアルノベル」に絞って、このスタイルのゲームの特性などを見ていきたいと思います。
ビジュアルノベルの黎明
「ビジュアルノベル」という名称が定着する以前、類似するゲームスタイルをもったゲームがヒットし、市民権を得ていきます。チュンソフト製作の『弟切草』『かまいたちの夜』などは「サウンドノベル」という名称で商標登録されたジャンルで、文章をベースに背景、BGMがあるというビジュアルノベルのイメージに近い作品です。
「ビジュアルノベル」という名称が初めて世の中に登場したのは、Leaf製作の『雫』『痕』『To Heart』の「ビジュアルノベル三部作」です。特に『To Heart』は全年齢移植、コミカライズ、アニメ化など様々なメディア展開を行った一大タイトルであり、エロゲの裾野を大きく広げた作品の一つであるとされています。
この辺りの時期、2000年前後にはもう一つ大きな動きがありました。ディスクの容量増加などの理由により、なんとノベルゲーにボイスがつくようになったのです。
こう聞くと「いや声が付いているなんて当たり前じゃん…」と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。かの『Fate/stay night』も、頒布されたものはキャラクターボイスが付いていませんでした。業界にとってボイスが付くようになるとは、それだけ革新的な出来事だったわけです。
こうしたきっかけなどもあり、00年代は『D.C』『AIR』などビジュアルノベル式エロゲの全盛期を迎え、さまざまなメディアミックスが行われ、オタク文化のメインストリームの一部を担っていくこととなります。
ビジュアルノベルの特性
こうして市民権を得てきたビジュアルノベルですが、そのゲームスタイルにはどのような特性があるのでしょうか。今一度振り返っていきましょう。
① 文章が基盤になっており、主人公の心情描写が含まれる場合もある
「ノベル」と銘を打っている通り、ゲームシステムのメインは「文章を読むこと」であり、クリックなりボタンを押すなりすることでテキストを流していきます。この文章は主に登場人物のセリフで構成されることが多いですが、主人公の一人称視点からの心情や状況説明も含まれており、一人称描写の小説っぽさがあります。
② セーブ機能により、物語に「しおり」を挟むことができる
ビジュアルノベルにおいてプレイヤーは(ほとんど)任意のシーンでセーブ&ロードをすることが可能であり、これは小説を読んでいる時に「しおり」を挟む行為に近いです。もっとも一つの本に複数のしおりや付箋をつけると読む時に非常に邪魔であり、この点で紙媒体よりも便利である、と言えるかもしれません。後述しますが、ビジュアルノベルは選択肢によって物語の展開が大きく異なる場合が多く、その点でも有用な機能になっています。
③ CG、一枚絵、音楽などが付随している
「ビジュアル」と名乗っている通り、ただ文章を読んでいくだけではなく、その状況にあったBGMが流れていることがよくあります。また、キャラクターの立ち絵で状況を表現することが多いのですが、時にはその状況を表現する一枚絵やCGに画面が切り替わる時もあります。さらに前述のとおり、キャラクターたちがその場で喋ります。これにより、文章だけでなく、絵、音楽、キャラクターボイスなどによる多方面からの状況描写がなされているのもビジュアルノベルの大きな特徴です。
ビジュアルノベルに関する私見
これらビジュアルノベルの特徴を見てきたところで、ビジュアルノベルという媒体に関する執筆者の私見を述べていきたいと思います。
① ビジュアルノベルの優れた点
「私見」という保険もかけ終わったので執筆者の勝手な意見を述べていくわけですが、個人的にはこの媒体、「アニメと小説のいいとこどり」と考えています。
まず執筆者的小説のいいところ。それは「文章による詳細な状況説明」だと考えています。映像・音声媒体は五感に強く訴えかけ、直感的に状況を理解するのには優れていますが、直感的に理解できないほど難解・複雑な状況表現が必要とされる場合には、文章による表現の方がより便利であると考えられます。
次にアニメのいいところ。言及してしまいましたが、「直感的な状況把握」が可能であることが映像・音声媒体の優れている点だと考えます。文章のみによる状況把握は、読者の想像力の強弱に依存するところがあり、イメージがしづらいことがままあります。
たとえば、執筆者個人的には服装に関する単語がてんでダメなので、文章上でこの人はこれこれこういう服装をしていて、と言われても全く想像がつきません。いっぽう、映像・音声を伴う表現では五感を通じて状況を直接理解でき、その場で流れている音楽や喋っているキャラクターの声によって、状況の雰囲気(和やかなのか、緊迫しているのかなど)臨場感も増します。こうして、自分の想像力以上の表現を見せてくれるのが映像・音声媒体の優れた点です。
これらを踏まえてノベルゲーについて振り返ってみると、文章による表現はもちろん存在し、映像・音声表現も必要に応じて一枚絵やCG、CVやBGMを入れることである程度の水準で達成されます。この二つによりプレイヤーはより高い解像度で主人公の置かれた状況に没入することができます。
② ビジュアルノベルの「ゲーム性」とは
ビジュアルノベルゲームへの批判で、「ゲーム性がない」ということがよく挙げられます。しかし、執筆者はそれは違うと断言できます。わかりやすく可視化されていないだけで、確かにこうしたゲームにも「ゲーム性」が存在しています。
それは何か。答えは「プレイヤーと主人公の相互作用」にあります。
世の中の「物語」と呼ばれるものは基本的に一本道であり、その観測者たるわれわれはそれに干渉することは許されていません。しかしビジュアルノベルにおいては、プレイヤーであるわれわれの選択によって物語の道筋が異なり、物語そのものを全く別のものに変容させることもできます。
ここにおいて、プレイヤーは文字通り「神」の視点に立ち、物語をただ見るだけでなく、自分の手で物語を「再生産」することが許されているわけです(「許されている」と言った通り強制ではなく、主人公に感情移入して主人公のつもりで選択することも出来ます。つまり、われわれは主人公視点とメタ視点を自由に行き来することが可能になるのです)。これは従来の物語体験と大きく異なる、ビジュアルノベルならではの特徴であると言えるのではないでしょうか。
小説などを読んでいた時に「ここで主人公がこうしていればなあ」と思った経験はないでしょうか。本来そのように物語の形を変える権限は作者にのみ許された権能ですが、非常に限定的な形でありながらビジュアルノベルではプレイヤーがそうした権能の行使が許されているのです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。ビジュアルノベルの魅力の0.01%ほどでも伝えることができれば幸いです。
ビジュアルノベルは映像と文章を組み合わせた新たな表現媒体であり、それゆえプレイヤーが主人公を通じ物語そのものを変質させる新たな物語体験を可能にしている、非常に斬新なゲームシステムを持っています。興味のある方はぜひプレイしてみることをおすすめします。
出典
伝説のギャルゲー「To Heart」発売から今日で20周年 時の流れに多くのファンから感動と悲鳴が - ねとらぼ