この記事は、冬のブログリレー5日目(5回目)のものとして書かれました。他のブログはこちらからご覧ください。
はじめに
みなさんこんにちは。ゆくとり(@mosoena)と申します。普段は00年代のビジュアルノベルをプレイしています。今回は京美同ブログリレーにて、そこらへんの話をさせていただきます。
ビジュアルノベルゲームには、約25年ほどの歴史があります*1。その歴史のなかで、様々なトライアンドエラー、そして淘汰と存続がありました。
この記事では筆者が知っている、美少女ゲームにおけるメーカーの試みとその結果について述べていこうと思います。
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ねこねこソフト『銀色』
このソフトは、2000年にねこねこソフトより発売された美少女ゲームです。「銀糸」という、何でも願いが叶うと言われているアイテムをテーマに、オムニバス形式の4章で話が展開されています。とても読みやすく、初心者にもおすすめしやすいゲームです。
さて、こちらのゲームの試みというのが、英語音声のオプションをつけたことです。
この銀色に関してですが、ねこねこソフト側は「ビジュアルノベルとして徹底的に映画を意識した作り!」と銘打って発売しています。
私的な解釈ですが、グローバルに展開することを意図して、映画を意識したシナリオや演出をしていく過程で、英語音声をオプションでつけた方が映画っぽいから英語音声をつけたと考えます。
結果として、後にリリースされた完全版では英語音声のオプションは無くなりました。一応、英語字幕はあるのですが、音声自体は日本語のままでした。
理由は定かではありませんが、純粋にゲーム全体の雰囲気にそぐわなかったから消されたのでしょうか?
余談なのですが、銀色で使われていた英語フォントが2バイト文字だったので、当時の英語版Windowsではそもそも表示できなかったようです*2。本末転倒で少し面白いですね。
こういう、先人達の努力の跡が垣間見えるのが、古い美少女ゲームの魅力の一つかもしれません。
科学アドベンチャーシリーズといえば、説明が不要なほどに有名かもしれませんが、説明をさせていただきます。
5pd(現MAGES.)とニトロプラスがコラボして発表された科学アドベンチャーシリーズ、比較的有名なのだとSteins;Gateでしょうか。シリーズの作品を全部列挙すると、『ChaoS;HEAdシリーズ』『Steins;Gateシリーズ』『Robotics;Notes』『CHAOS;CHILD』『ANONYMOUS;CODE』です。(ANONYMOUS;CODEはあんまり知らないからこの記事では扱いません。)
実はこれらのゲームは、純粋な2〜3択を選んで、それによってルートが変わるというシステムではありません。都度に出てくる選択方式やフラグ管理がかなり特徴的です。
CHAOS;CHILDやChaoS;HEAdシリーズでは、その時の主人公ないしは我々プレイヤーが抱く感情(ポジティブかネガティブか)を選択することで分岐をします。
Steins;Gateシリーズでは、一定のタイミングで電話をかけたりメールやLINE(ゲーム内ではRINE)に返信することで分岐します。
Robotics;NotesではARアプリやゲーム内SNSで返信することで分岐します。
このように、世界観を重要視したような選択方式をとっています。
こちらも私的な解釈ですが、元々、紙芝居と揶揄されてきた*4美少女ゲームにアクセントとなる要素を入れようと試行した結果、このような独特な分岐方式を入れたのではないでしょうか。
こちらは2010年にfengから発売された発売された美少女ゲームです。fengといえば、ロープライス美少女ゲームの『セイイキシリーズ』などで有名ですが、一体どのような試みをしたのでしょうか。
それはバイノーラル音声をゲーム内ボイスで使ったことです。
音声作品をFANZAなどで買い漁っている美少女ゲーマーなら、一度は夢想したことがあるのではないのでしょうか。
『あぁ……バイノーラル音声の美少女ゲームがあればなぁ……。』
バイノーラル音声とは、平たくいうと、ありえないくらい音を拾うマイクを用いることで、聞いている側は喋っている人の距離感や位置を感じることができて、臨場感を楽しめる音声のことです。
この技術が美少女ゲームに輸入されれば、あのヒロインやそのヒロインが、まるで私たちの隣にいるかのような感覚を味わうことができ、最高の体験になるのではないでしょうか。
結果として、バイノーラル音声を用いたエロゲは流行りませんでした。
毎度のことながら私的な解釈ですが、そもそもこのゲーム自体が2010年にリリースされたので、当時は今ほどバイノーラル音声が流行っていなかったこと、音声に没入するためにはスクリーンの光が邪魔なことなど、様々な要因が考えられます。
実際には、流行らなかったというだけで、バイノーラル音声が使われている美少女ゲームは時々リリースされています。気になる方はプレイしてみてください。
https://togetter.com/li/1521342
↑これは、フリー声優の方が美少女ゲームとバイノーラル音声について考察している一連のツイートをまとめてあるものです。この記事を書いてから見つけましたが、とても興味深い内容でした。
おわりに
古い美少女ゲームを漁る楽しさの一つが、美少女ゲームの歴史が集積していく過程を見られることだと私自身は考えています。この記事で、古い美少女ゲームに興味を持たれた方が一人でもいましたらこの上なく幸いです。もし、質問や話したいことなどありましたら、私のTwitterまでご連絡ください。
また、美少女ゲームに興味があって、誰かしらと語り合いたい、美少女ゲームのグループに属してみたいという方がいましたら、京美同(京大美少女ゲーム同好会)に是非ご参加いただけたらと思います。
↓京美同公式Twitter
https://twitter.com/kuvnlovers?s=21&t=nltKegkW1m6t2DxSa5y7YA
*1:1996年にLeafが『雫』をリリースし、ビジュアルノベルという言葉が生まれ、現在に至る26年間。
*2:当時の英語版Windowsでは2バイト言語には対応しておらず、 英語版Windows 2000にて2バイト言語を表示させようとするとバグで表示されない。
1バイト言語:英語やドイツ語など、コンピューターにて256種類にまとめられる言語のこと。
2バイト言語:日本語や中国語のように文字の種類が多いことから、コンピューターにて1バイトの情報量で表せず、2バイトの情報量で表す言語のこと。
*3:シリーズ内でもニトロプラスが関わっていない作品もある。
*4:美少女ゲームは音響、背景、テキスト、立ち絵で主に構成され、プレイ中は基本的に画面の移り変わりを見ているしかないので、紙芝居と揶揄されることがある。