【10日目】純粋ジト目批判
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序文
本稿は、最近世に蔓延る自称ジト目の多さに辟易している筆者が、ジト目の本分に立ち返り、ジト目を再定義することを目指したものである。また同時に、「ジト目は負の感情の表出である」とする一般的な言説に対する重要な指摘をしている。
ジト目に対する一般的な認識
ジト目再定義の試みの前には、世間一般におけるジト目への認識を知っておかなければならない。
まず、ジト目とは何か……
有名なウェブ事典に載っているジト目の定義(説明)を引用する。
「半眼」の一種で、まるで相手をにらみつけるかのようなジトっとした表情。またはそのときの目の形。
(中略)
・敵意や不満を持っている場合
視線を向けた相手に、恨み、反抗、苛立ち、不快、警戒等の敵意、またはそれに近い感情を持っている場合。(いわゆる「怒り」のようにはっきりとした感情より「恨み」のようにやや陰湿な感情。)
眉がつりあがっているのが特徴。
・相手を見下している場合
視線を向けた相手に、軽蔑、呆れ、軽視、等の相手を見下す感情を持っている場合。(ジト目 (じとめ)とは【ピクシブ百科事典】より引用)
これは、いけない。
ジト目にとって不可欠であり、ジト目を理解する上で最も重要な要素が抜けているのだ。
それに、ジト目に全く負の感情が込められていないとは言わないが、ほとんどの場合、それは深刻なものではない。「敵意や不満、見下しを込めている」と説明するに留まっているのは非常に違和感がある。
次項からはその理由を説明する。
原義ジト目
「ジト目」という語は、ある種の感情を込めて注視する際に使用されるオノマトペ「じとっ」+「目」から成る。すなわち、ジトっと見ていなければ原義(狭義)ジト目たり得ないのは明らかである。
ここで、美少女ゲームを例に挙げて、「ジトっと見る」とはどういうことかを深掘りしてみる。
美少女ゲームのキャラクター達はどういった場面で相手をジトっと見るのだろうか?

1. 主人公などの発言・行動にドン引きするとき
これが一番多いシチュエーションであろう。重要なのは、ジト目で見るキャラと見られるキャラが多くの場合敵対関係ではなく、ジト目が深刻な対立を招くことも少ないという点だ(統計は取れなかった。無念)。キャラ達はそれを承知の上でジト目を使用している。
2. 嫉妬
これも結構見かける。美少女ゲームであれば、他のヒロインに目移りする主人公に対して向けられるパターンが多いだろう。つまりは好きな人間に向ける視線なのである。うらやましい限りだ。
3. 疑い
時々ある用例。殺人事件の被疑者に向けるレベルの疑いではなく、もっと軽い。
「もしかして、あなたがAさんを殺害したんですか?(ジト目)」←真面目にやれ。人が死んでんだぞ。
「あんた冷蔵庫のプリン勝手に食べたでしょ(ジト目)」←これだ。
4. からかい
たまに見る。常時半目でからかい上手のキャラがよくやってそう、という謎のイメージがある。思いつくキャラは(常時半目ではないが)『バンドリ』の青葉モカとか、『喫茶ステラと死神の蝶』の明月栞那さんとか。

美少女ゲームで頻出のジト目パターンといえばこれくらいだろうか。重要な用例を挙げ忘れていることに気づかれた方は、コメントにどうぞ。
以上に挙げた四つのパターンには共通点がある。ジト目で見るキャラと見られるキャラの間にはそれなりの関係性が既に構築されているという点だ。それゆえに、ジト目というあからさまな表情を向けることが深刻な問題に発展しない。
今度は逆に、一般的な説明にある「敵意や不満、見下し」といった感情を込めた視線が、「ジトっと見る」と表現するのに適切か否かを考えてみよう。
筆者が最も不適当だと考えるのが、「敵意」を込めた視線だ。
バトルものなどで、敵が主人公をジト目で見る、などというシーンを見たことがあるだろうか?
あるとしたら「お前ら結構仲いいだろ」的状況だと思われ、「敵意」という説明には「※激しい敵意ではない」と注釈を付けなければなるまい。
もし本気の殺し合いの場でジト目という表現を使えば、緊張感がなくなりギャグシーンになりかねない。ジト目は敵意の表れであると説明する人は、睨みつける目やゴミを見るような目と混同しているのではないか(違いは後述)。
また、「不満や見下し」についても、強い不満や見下しである場合は同じく睨みつける目やゴミを見るような目と表現する方がいいだろう。
まとめると、ジト目を「敵意や不満、見下し」の表れだと説明することは、ジト目が深刻な場面で使われる表情だという誤解を招きかねない。よって、ジト目の負の感情の程度や限定的な使用状況に言及していないウェブ事典の説明は追記修正する必要がある(※Wikipediaには「軽度の不快感」と記載があった。えらい。でももっと強調してほしい)。
ジト目と擬似ジト目との違い
本項では少し脱線して、ジト目と擬似ジト目――なり損ないの自称ジト目との違いを説明する。筆者の提案する定義に照らせば、自ずとジト目と非ジト目は区別可能であることが分かるだろう。
・睨みつける目との違い
「じと~」とはシリアス度が違う。見た目の違いでいえば、眉間の皺が寄るのが睨みつけであまり寄らないのがジト目だ。
・ゴミを見るような目
同じくシリアス度が違う。ゴミを見るような目が下がり眉で目元に影を落とすように描かれるのに対し、ジト目は多くの場合水平眉である。
・半目との違い
半目とジト目はイコールではなく、包含関係であるように思われる(当然ジト目⊂半目だ)。ジトっと見ていない単なる半目をジト目と称するのは検索避けの観点から好ましくない。
ついでに、よくいる常時半目キャラについても私見を述べておく。彼らはずっとジト目みたいな顔をしていて筆者なら好きそうと思われるかもしれないが、実はあまり好みではない。なぜなら――
常時半目キャラはジト目になることができない!
どういうことか?
半目というのは見た目上はジト目に似ている(それどころか同じ場合もある)。だから、常時半目キャラが呆れなどの感情を覚えても、半目からジト目に表情を変化させることができないのだ。無理やりジト目になろうとしても、気づかれることはないだろう(ジト目には受け手の存在が重要である)。
彼らは二次元キャラクターでありながら、中途半端なジト目しかできない我々三次元存在よりずっと不利なのである。自らハンデを背負いにいく心意気だけは称賛に値する。
・眠そうな目との違い
ジトっとした感情が伴っていないので論外。
・巷にあふれる、目の上が直線になっていない、自称ジト目の中途半端ななり損ない共との違い
お帰りください。表現には存在する自由がある。だが、私は嫌いだ。
以上、ジト目と擬似ジト目の違いでした。
ここまで読んだ読者の方には、筆者がジト目に並々ならぬこだわりがあることを理解していただけたかと思う。実際「みやこそふと」でのゲーム制作では、ジト目の運用に相当気を遣っているつもりだ。
イラストレーターの方にはジト目差分を描く際、
・目の上を直線にすること
・日常シーンで使われるギャグ顔であると分かるようにデフォルメすること
の二点をお願いした。
また、表情差分の指定という分担して行う作業でも、ジト目差分だけは筆者が全てシナリオ段階で指定している。前に出てきた「セリフ(ジト目)」はシナリオライティングの癖ということだ。外で出さないよう気をつけたい。
『生命の栞』は基本シリアスなので登場頻度は少ないが、ここぞという場面での登場を楽しみにしていただけると幸いだ。
ちなみに、睨みつける表情は別差分で作っていただいた(ありがとうございます)。
結論
本題に戻る。
筆者が主張したいのは、ジト目は露骨に嫌な顔でありながら、
1. 軽度の不満などを表明するための、
2. 深刻な対立を企図しない、
3. 関係性ありきの表情
であるということだ。
総括して、ジト目とは「露骨に嫌な顔していい関係性に甘えつつ、比較的軽い呆れや嫉妬、疑い、からかい等の意思を相手に表明するための表情」と定義することができる。
では、それを踏まえてよく考えてみてください。
それってめちゃくちゃかわいくないですか????
結論。ジト目はかわいい(長々書いてそれかよ)。
それが原義ジト目である限り、ジト目って全部かわいいんすよ。
筆者イチオシのジト目キャラもジト目の原理に忠実でとてもかわいいです。とくと見よ、灰原さんの模範的ジト目を。

おほぉ~~~この熟年夫婦感たまんねぇ~。灰原さんがジト目してるシーンって全部平和な日常生活でなんだかんだ幸せそうなんですよね。
世界よ、これがジト目のあるべき姿だ。
……………………。
俺、ジト目好きを装った関係性オタクやったんやなぁって。
筆者が勝手に気づきを得たところで、この記事とGWブログリレーはおしまいにします。お付き合いいただきありがとうございました! 良きジト目ライフを!
(文責:Youjyo)